科学技術活性化のために

もはや理科離れや技術力低下は、真新しい話題ではない。その根本原因のひとつとして、科学技術が輝きを失っているのではないかとの危惧の声をよく聞く。科学や技術が、人々に夢や未来像を提供できてはいない。目標がこじんまりと固まっており、人々にワクワクさせるような期待感を与えてはいない。

ここに、興味深い調査結果がある。「将来に希望が持てるか否か」を直接問うたものである。25歳から34歳までを対象にした調査(※1)では、将来日本社会は経済的に非常によくなると答えた割合はわずか4%だった。一方、中学2年生と小学5年生に対して行った調査(※2)では、「あなたが大人になる頃に日本の社会や暮らしは良くなっていると思いますか」という問いに、中学2年生(15歳)のうち「今より良くなる」と答えた割合は8.5%、小学5年生(12歳)だと21.2%である。2つの調査から考えると、日本人は年齢を重ねるごとに希望を失っていくように見える。

科学技術が輝いていたのは、いったいいつの頃だろうか。個人的には1969年のアポロ月着陸や1970年の大阪万博の時期と感じている。この頃は、豊かな社会を築くために科学技術が貢献するはずであるという認識があった。科学技術が輝いていたときとは、明日の社会に対する希望や豊かさを科学技術がもたらしてくれるという期待があった時期でもある。

科学技術は、本来、未知なるものを提示し、夢と驚きを与えてくれるものである。この輝きを取り戻すことが、科学技術政策や人材育成の中核でなければならない。2030年に向けて、真っ先に取り組むべきことは、夢のある世界像を科学技術が実現してくれることを強くアピールし、夢を語れる人材を育てていくことであろう。

筆者は、世界から尊敬され自信を持てる国になるための以下の7つの夢を提唱している。

1)希少資源を輸入しなくても十分にやっていける国になる
2)太陽と水と空気で走ることのできる車を作れる国になる
3)世界の飲料水の25%を日本の技術で作り出す
4)わが国がエネルギーの輸出国になる
5)わが国が食料の純輸出国になる
6)日本人の誰もが翻訳機を身につけ気軽に海外に出かけられるようになる
7)寿司文化を孫子の代まで伝えることができる国になる

これらは、一見荒唐無稽のように見えるが、わが国の先端技術はその可能性の端緒を拓いている。科学技術を用いて人々に夢を与えるのが、私どもの使命である。

※1:山田昌弘「若者の将来設計における子育てリスク意識の研究」(厚生労働省科学研究費補助金平成14-15年、総合研究報告書).

※2:東京都生活文化局「親子関係に関する調査報告書」(2003)

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科学・安全政策研究本部 主席研究員
亀井 信一

2009年10月13日

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